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用語集

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A

alloy:合金

2種類以上の金属元素で構成された物質。金属。
一方の(比較的少ない)元素が他方の(主たる)元素の結晶にどう関わるかという観点から、以下のように分類することができる。

1.主たる元素と置き換わる置換(substitutional)型
ほとんどの合金は、元素同士の比率が限定された置換型固溶体である。

2.主たる元素の結晶の隙間に入り込む侵入(interstitial)型
例えば鉄に炭素が侵入型で混入した侵入型固溶体が鋼である。
炭素の他、ボロンやシリコンも侵入元素として合金の特性を調整するためによく用いられる。

3.金属間化合物

更に、この固溶体または単原子結晶が、複数集まっているか/単一か、という違いに注目して、
・単一の固溶体だけでできたもの
・異なる種類の固溶体または単原子結晶が独立して(しかし比較的微細な構造をもって)存在する共晶
という分類もある。

(*1)
固溶体:2種類以上の金属元素同士が均一に分散した結晶

C

Coulomb force:クーロン力

二つの点電荷が存在するとき、その電荷の間に働く引力または斥力。
電場や電磁波の存在を説明するだけでなく、クーロン力は磁場の原点でもある。

クーロン力は万有引力と同様、距離の2乗に反比例するが、これらには次のような大きな違いがある。
・万有引力には斥力は無く引力だけだが、クーロン力には引力と斥力の両方がある。
・クーロン力は万有引力に比べ圧倒的に強い力を発揮する。

crystal:結晶

原子が、ある方向にある繰り返し規則をもって配列している物質、または物質の状態。
単一の種類の原子から成っていても、複数の種類の原子から成っていても、同様に結晶と呼ぶ。

結晶というと、鉱物など美しく硬い物質や雪の結晶が思い起こされるが、例えば鉄も結晶である。
すなわち、以下のとおり、結晶は結合の種類にかかわらない。

・共有結合性結晶(共有結晶)
・金属結合性結晶(金属結晶)
・イオン結合性結晶(イオン結晶)

半導体や金属では、「多結晶」「微結晶」「アモルファス」といった結晶状態の度合いを表す用語がよく使われる。
これは、半導体や金属の電磁気的特性が、原子の繰り返しの規則性に強く依存するからである。

cutting tool:切削工具

「鉾と盾」で面白く表現されるとおり、材料と切削工具の材質はいずれも日進月歩である。
現在、一般的な切削工具としては以下のようなものがある。
おおまかには、下記リストの上方は鋼に近く(硬度と耐熱性が低く靭性が高い)、下方はセラミックに近い性質を持つ(硬度と耐熱性が高く靭性が低い)。

<高速度鋼>
クロム、タングステン、モリブデン、バナジウム、コバルトなどを含んだ鋼。

<超硬合金>
タングステンの炭化物(炭化タングステン:WC)を、コバルトをバインダとして焼結させた材料(K種)。
これに炭化チタン(TiC)や炭化タンタル(TaC)を添加したもの(P種)もある。

<サーメット>
炭化タングステン以外の金属炭化物、または金属窒化物を焼結した材料。
炭化チタン(TiC)、炭窒化チタン(TiCN)、窒化チタン(TiN)などがある。
バインダーにはコバルトやニッケルが用いられる。

<CBN>
立方晶窒化ホウ素(Cubic Boron Nitride)のこと。
Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体のような取り合わせだが、そのとおり正四面体構造をとることによってダイアモンドと同等の硬さを持つ。

D

Decibel:デシベル
dB:デシベル

2つの量の比を、桁数の差として表した値。
(すなわち比の常用対数をとった値である。)
10と10000との比は1000であり、桁数(それぞれ2桁と5桁)には3桁の差がある。
これが
3ベル
である。
普通は小数点を避けるために10倍し、代わりに1/10を表す接頭語「デシ」を付け、
30デシベル
30dB
とする。

0ベル = 0デシベル = 1倍
0.5ベル = 5デシベル = 3.162倍
1ベル = 10デシベル = 10倍
1.5ベル = 15デシベル = 31.62倍
2ベル = 20デシベル = 100倍

デシベルは、仕事(エネルギー)または仕事率(単位時間あたりのエネルギー)を表現するのに用いられている。この事実(あるいは慣例)は重要である。
例えばよく用いられるのは、
・電力(電磁波や光を含む)
・音の大きさ
に対してである。
そして、これらにはそれぞれ、
・電力∝電圧の2乗
・音の大きさ∝音圧の2乗
という関係があることに注意する必要がある。したがって電圧や音圧を比較する場合は、それが仕事率である電力や音の大きさに影響する度合い「2乗」を加味しておかなければならない。
すなわち、
電力や音の大きさの比が1000(3桁)
である場合、
電圧や音圧の比は1000000(6桁)
になることから、比較する測定値が電圧や音圧であっても、その桁数の差(3桁)を2倍しておけば(6桁)、これらが電力や音の大きさになった場合をあらかじめ見越して 60dB と表すことができる。このことが、「電圧や音圧では常用対数の20倍」という約束事の理由である。

E

Elastic deformation:弾性変形
Plastic deformation:塑性変形

ほとんどの金属材料は、応力が加えられると変形し、それが除かれると元に戻る。しかし応力がある特定の大きさを超えると、それが除かれた後も変形は元に戻らない。これらの現象をそれぞれ、弾性変形、塑性変形と呼ぶ。
塑性変形はイコール破断というわけでばない。変形の量が抑制されれば(すなわち荷重が除かれれば)、当然だがその材料は破断には至らない。金属製品では、加工硬化を意図して塑性変形を製造段階で積極的に利用しているものもある。ただし、実際に製品が出荷されそれが現場で一定の荷重を受け止めているとすれば、材料が塑性変形を起こしても荷重は除かれず変形の量も抑制されないケースが一般的である。この場合は塑性変形が即破断につながることになる。
セラミックスなどでは、弾性変形はあるが変形量が小さく、応力を増してゆくと塑性変形の領域が観測されないまま破断に至る。

Energy:エネルギー

仕事と同じ量。これらを区別する必要は無い。
「仕事」と「エネルギー」については、片方は作用で片方は能力、などとする向きもあるが、それは「仕事」という言葉がたまたま動作を表していることから、
・仕事をする(○)
・エネルギーをする(X)
・仕事を移動する(X)
・エネルギーを移動する(○)
といった違和感を意図や時刻にからめて説明してみようという軽い試みであ

F

ferromagnetism:強磁性

外部磁場(外部から与えられた磁場)と同じ方向に新しい磁場を生むように、物質中の磁気モーメントがそろう性質。
鉄、コバルト、ニッケルは強磁性を持つ。

1.不対電子を持つ原子が
2.結合状態(結晶)になってもそれを保ち
3.このことによる磁気モーメントは外部磁界を与えられることで回転し
4.隣り合う磁気モーメントが全て同じ方向にあるとときに安定する

これらが、強磁性を生む典型的な条件とその振る舞いである。

Flange:フランジ

構造物本体に付け加えられた「つば」状の部分。
多くは、その構造物が本来の機能を実現するための形状とは別のものであり、これを補うための特定の目的を持つ。
例えば、管(本来の形状は円筒)の端に付けられた円盤は、二本の管をお互いに接続して固定する。また、軌道の車輪(本来の形状は円盤)やレール(本来の形状は台)に付けられた盛り上がり部分は、脱線を抑止する。
機械カバーにもフランジを持つものがある。その主な目的は、取り付け作業の簡素化、脱着の利便性、機械的な固定、などである。

Force:力

力学における力の概念は、仕事(エネルギー)や仕事率(単位時間あたりのエネルギー)に比べるとイメージすることが難しい。
これは物体にエネルギーを与える(状態を変化させる)その元となる量であり、
機械設計の現場においては、
・Fの力で物体をrだけ持ち上げた時に使った(与えた)エネルギーを F x r (MLT-2)(Nm)
あるいは、
・摩擦に抗してFの力で物体をrだけ移動させた時に使った(与えた)エネルギーを F x r (MLT-2)(Nm)
としたときの、そのFの値を力と言う。

前者、物体を持ち上げるときに必要になる力Fは、
物体の質量:m (M)(kg)
重力加速度:α (LT-2)
とすると
F = m x α (MLT-2)(Nm)
である。

H

hardmagnetism:硬磁性

外部磁場が与えられると物質中の磁気モーメントが一斉にそろい(強磁性)、その後外部磁場を取り去っても物質中の磁気モーメントがそろったままでいる性質。

このためには、強磁性体に、
・外部磁場が無くなっても磁区が生成されない状態を保つ
という条件が加えて必要となる。

強磁性体のうちこの性質を持つものが磁石である。

I

intermetallic compound:金属間化合物

合金の一種。
置換型/侵入型固溶体が元素の比率に応じて連続的に特性を変化させる合金であるのに対し、金属間化合物は片方の金属の性質を一部残しながらも新しい性質を示す合金である。
金属間化合物は元素同士のある決まった比率でのみ存在する。
金属ではありながら、自由電子の中の陽イオンの結晶と言うよりは、元素同士が結合をもった結晶と言ったほうが近い。

実際これまでに、工業的に優れた特性を示すものが多く見つかっており、
・耐熱材料
・超電導材料
・形状記憶合金
・光学材料
・超硬材料
などに用いられている。

ISO:国際標準化機構(International Organization for Standardization)

WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)の各種協定のうちのひとつに、
TBT協定(Agreement on Technical Barriers to Trade:貿易の技術的障害に関する協定)
がある。これは、製品の技術的仕様に対し国際規格または国際規格に準じた国内規格を適用させ、各国間の貿易における技術的障害をとり除くための協定である。そして、このTBT協定を根拠として、その元となる国際規格を作るために、
ISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)
IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)
ITU(International Telecommunication Union:国際電気標準会議)
などの各種機関が存在する。
WTO加盟国は、これらが定める国際規格に合わせて国内規格を調整しなければならない。

国際規格を定める機関のうちISOは、電気(IEC)・通信(ITU)を除く全分野を広くカバーする。
最近では「マネジメント標準」という新しいタイプの標準が有名である。
・ISO9001
・ISO14001
・ISO27000
ISOでは分野別に幹事国が割り振られ各国の機関がそれに応ずる。したがって作成される標準はデジュール標準と言える。

IEC:国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)

主に、IEC(電気)・ITU(通信)・ISO(その他)とある国際規格を扱う機関のうちのひとつ。
TBT協定の元となる国際規格を作成する。
IECでは分野別に幹事国が割り振られ各国の機関がそれに応ずる。したがって作成される標準はデジュール標準と言える。

代表的な分野には以下のようなものがある。
・発送電/電気設備
・モーター
・半導体
・家庭用電気/電子機器、照明
・電子部品
・医療設備
(技術委員会の名称より範囲として抜粋)

例えば、機械(電気装置)の設計に関連するものとしては、
IEC60950:(情報技術機器の電気的安全性)
IEC60529:(電気機械器具の外郭による保護等級)
などがある。

ITU:国際電気通信連合(International Telecommunication Union)

主に、IEC(電気)・ITU(通信)・ISO(その他)とある国際規格を扱う機関のうちのひとつ。
TBT協定の元となる国際規格を作成する。
ISOやIECが分野別に幹事国を割り振ってそれぞれの国が標準化を主導するのに対し、ITUの実権/実態は私企業にあるとも言われ、作成された標準は recommendation(推奨:勧告)という位置づけで発せられる。しかしその及ぼす影響の質はフォーラム標準やデファクト標準のようなものとは異なり、やはりデジュール標準に位置づけられる。

・無線通信部門(ITU-R)
R:Radiocommunication
衛星通信を含む無線通信の周波数や電波/変調形式に関する標準化を行う。相互干渉を防ぐという独特の目的があり、その性質上、法的な効力を目的とする世界無線通信会議や各国電波法との密接な関係がある。

・電気通信部門(ITU-T)
T:Telecommunication
Gシリーズ:通信回線の伝送システムや伝送媒体
Hシリーズ:動画や音声の圧縮形式やテレビ電話
Xシリーズ:ネットワークシステム

J

JIS:日本工業規格(Japanese Industrial Standards)
JISC:日本工業標準調査会(Japanese Industrial Standards Committee)

JISは、日本国内において、工業製品の生産効率(質的にも量的にも)を向上させる目的で統一し制定されている規格あるいは仕様。JISCが作成し、主務大臣が制定するデジュール標準(公的標準)である。JIS自体は(もちろんその他「標準」「規格」「勧告」とされるものも一般的に)法令ではないが、法令がJISを参照することはある。現在のJISは、ISOやIEC、ITUなどの国際規格にできるだけ整合するよう調整されている。
日本以外の各国にも同様の国内規格は存在するが、それぞれISOとの関係には不完全な部分があり、ISOを介した規格や仕様の整合性には注意を要することがある。

各国の「国家標準を定める機関」は次のとおり。
JISC(日本)
ANSI(アメリカ)
SCC(カナダ)
BSI(イギリス)
DIN(ドイツ)
AFNOR(フランス)

M

magnetism:磁性

ミクロな意味で磁場に反応する性質のこと。
「ミクロで」と言うのは、例えば、向きが正反対であるミクロな反応がそれぞれ同数存在すれば、マクロにはその物質は磁場に反応していないように見える(反強磁性)ということである。

反応の向きや強さによって、
・強磁性
・反強磁性
・常磁性
・反磁性
などに分類される。

日常の生活では、「磁性」は非常にあいまいな意味をもって使われがちで、
・磁石と引き合う性質
あるいは
・磁石としての性質
を持つことが「磁性がある」などとして表現されることもある。前者は強磁性のことであり、後者は強磁性のうちの更に硬磁性のことである。
上にリストしたような磁性の分類が必要無いのであれば、「磁性」という言葉を乱暴に使うよりは、「磁石につく」「磁石である」という説明を素直に使ったほうが致命的な間違いを起こしにくい。

metal:金属

「金属」の定義は多面的で、またあいまいな部分もあるが、一般的には以下のような特徴をもった固体のことを指す。
・常温下で金属結合状態にある。
・バンド理論における禁制帯が存在せず、自由電子の集まりが多くの性質を特徴づける。
したがって、
「電気や熱を良く伝える」
「新鮮な切断面に金属光沢がある」
ことは、少なくとも日常の生活や産業活動においては、この分類の一般的な目安になっていると言える。

金属は、それを構成する元素を周期律表で見て、アルカリ金属、アルカリ土類金属(広義)、遷移金属、その他の金属、の4つのグループに分けることができる。あるいは、遷移金属と典型元素金属、という分け方もある。
このうちアルカリ金属やアルカリ土類金属(広義)の中には、ナトリウムやカルシウムなど、一般的な感覚で金属と呼ぶには多少違和感の残る元素も多くある。

「アルカリ金属」
リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(Ka)..

「アルカリ土類金属(広義)」
ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)..

「遷移金属」
鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、
金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、
チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、
タンタル(Ta)、タングステン(W)..

「その他の金属」
アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、錫(Sn)..

metallic bond:金属結合

・元素の陽イオンが周期性をもって整列し、
・その間に自由電子(自由に移動することのできる電子)が陽イオンの持つ電荷の総数と同じだけ固定されずに存在し、
・それらの間のクーロン力によって元素同士が引き付け合う、
このような結合を金属結合と呼ぶ。

金属結合は、他の結合と比較して以下のような特徴を持っている。
これらは自由電子の存在によるものである。
<表面の溶解>
金属結合から電子を奪うとそこから陽イオンが離れる。
<表面での析出>
陽イオンに電子を与えるとそこで金属結晶になる。
<展延性>
外部からの力によって壊れにくく、変形しやすい。

P

Power:仕事率

英語では「Power」だが、日本語の「力」とは異なることに注意しなければならない。「力」は「Force」である。
仕事率とは、その名の通り、時間あたりの仕事(エネルギーの移動量)のことを言う。
例えば、物体に、ある仕事、
W (ML2T-2)(Nm)
を与えるとする。これを急に与えるかゆっくり与えるかによって仕事率 P は異なる。
P = dW/dt (ML2T-3)(W)

仕事率を W(ワット)とも表す。この呼び名の身近な例はむしろ電気エネルギー、
電流×電圧
であるが、力学の W(ワット)も同じ量である。

pure iron:純鉄

純度99.9%以上の鉄。鉄そのままの特性、すなわち常温でフェライト構造を示す(α鉄)。
主な用途は2つである。

・軟磁性材料
透磁率が高く保持力が低い。

・深絞り用材料
冷間鍛造性に優れている(柔らかい)反面、切削加工性が悪い。

R

Rib:リブ

語源は肋骨(rib)。
機械/建築産業では、構造物の骨格または突起の一部。
柱や梁のように全体を支える主骨格ではなく、板状で強度が充分でない物体を所定の形状に保つために付け加えられた部分(またはその繰り返し)を指すことが多い。骨格としての役目を果たさないものでも、その形状によっては同じ様に呼ばれることがある。
機械カバーでは、板状であるパネルのたわみを抑制するため、ハット曲げやL曲げの補強材を溶接したりエンボス加工を施したりすることがあるが、これらもリブの一種と言える。

S

special steel:特殊鋼

炭素以外の金属を含む、鋼を主体とした合金。
以下()内は、鉄と炭素以外の元素を示す。

・ハイス鋼 HSS(高速度鋼)
(クロム、タングステン、モリブデン、バナジウム)
高速切削(高温になる)においても耐摩耗性や靭性をある程度保つことから、切削工具に用いられる。
更にコバルトを添加したものはコバルトハイスと呼ばれる。

・ハイテン鋼 HTSS(高張力鋼)
(シリコン、マンガン、チタンなど:各メーカー独自に特徴あり)
自動車の軽量化に資する材料として、最近急激に使用比率を増してきている。

・クロモリ鋼
(クロム、モリブデン)
強度重量比が高く自転車フレームなど構造管に用いられる。

・ステンレス鋼
(クロム、ニッケル)
クロムを一定以上含んだ鋼。
ご存知のとおり、主に耐食性を重視した製品の材料として用いられる。

・電磁鋼
(シリコン)
透磁率をできるだけ保って導電率を下げている。鉄損を抑えて変圧器やモータに使われる。

steel:鉄(元素)

ビッグバンのすぐ後に進んだ核融合は鉄で終わる。これよりも陽子が多くなると電気的な反発が顕れてくるからである。すなわち鉄はすべての元素の中で、ある意味最も安定な元素とも言える。
他の惑星や太陽にも多く存在し、地球では地殻で5%を占め、地球全体では重量比35%に及ぶ。

現代の「鉄」のイメージは、古代の鉄器、産業革命、赤く錆びた鉄骨、それに「産業の米」「鉄は国家なり」など、非鉄金属やその他コンポジット材料に比べるといささか時代遅れに見えるかもしれない。しかし実際にはそのようなことはない。社会における鉄は、主には「鋼」として、未だにそしておそらくこれからも長く主役であり続ける独特の材料である。

steel:鉄(製鉄)

高炉炉上から鉄鉱石をコークスと同時に投入、炉の下から1200℃程度に加熱した空気を吹き込んでコークスを燃焼させると、コークスの炭素が鉄鉱石の酸化鉄を還元し、鉄は不純物とも分離されながら自重によって下に溜まる。これが銑鉄である。銑鉄は鉄と炭素の共晶点(比較的低温)で溶けているので炭素が多く含まれている。

銑鉄はそのまま鋳物にも用いられるか、多くは鋼の材料になる(製鋼)。

steel:鉄(製鋼)

転炉では、高炉から持ち込まれた溶銑(溶けた銑鉄)に空気を吹き込むことで銑鉄の炭素が燃焼し(脱炭)、溶銑は溶鋼となる。

注:溶鉱炉とは字のごとく鉱を溶かす高炉のことである。我々はオレンジ色に溶けた鉄を湛えた釜=転炉を「ヨウコウロ」と呼びたくなることがあるが、溶鋼炉という言葉は残念ながら無く、したがってそれはあまり正しくない。

上述の高炉+転炉プロセスとは別に、鉄のスクラップを材料とし電炉(電気炉)を用いて製鋼する方法がある(電炉鋼)。粗鋼生産に占める電炉鋼の割合はアメリカでは6割を超える。日本では2割強である。

steel:鉄(工業材料)

比較的採取しやすい原料だけでも産地は世界中に分布していること、合金化や熱処理で様々な用途に応じた特性を付加できること、加工が容易であること、強磁性を持つ数少ない元素のひとつであること。これらのことから、鉄は他に比べ飛び抜けて価値(価格ではなく)の高い金属と言える。鉄を主成分とする工業材料は、純鉄、鋼、特殊鋼に分けることができる。

1.純鉄
99.9%以上の純度を持つ鉄。

2.鋼
一定以上の炭素と鉄との合金。

3.特殊鋼
鋼を主体とした、他の金属との合金。

steel:鋼

炭素を一定以上含む、鉄と炭素との合金。

鋼はしかし、鉄の中の炭素の量で特性が決まるのではない。炭素は様々な形で鉄と共存することができるからである。それは、セメンタイトというセラミックの中であったり、フェライトとそのセメンタイトとの層状構造であったり(パーライト)、組織マルテンサイトであったりと実に様々で、この幅の広さが鋼の適正をあらゆる方向にマッチさせるのである。

では、鋼では、その「炭素が存在する状態」をどのようにコントロールしているのか。例えば、高温でオーステナイトに多く溶け込んだ炭素が冷えてフェライトになるとき、以下に示すとおり炭素は余ってしまうことになる。どういう過程であればどんな形でその余った炭素を存在させることができるのか、このことは、鋼の特性を左右する最も重要な要素と言える。

鉄の結晶構造は、
・体心立方(フェライト構造:α鉄)
・面心立方(最密)(オーステナイト構造:γ鉄)
この2つのいずれかである。純鉄は室温でフェライト構造をとる。オーステナイト構造は純鉄では高温で、合金では室温でも現れる。
一方、それぞれの炭素固溶量は、
・フェライト:0.02%
・オーステナイト:2%
である。

T

Torque:トルク

力のモーメント(力と距離の外積)として定義されるが、簡単な機械設計ではそこから大きさだけを取り出して、回転軸を中心にしてその回転軸を回そうとする強さとして捉えれば良い。
これは、
力を加える場所と回転中心との距離:r (L)(m)
加える力:F (MT-2)(N)
とすると、トルク T は、
T = F x r (MLT-2)(Nm)
である。
1mの外から1Nの力で回転させるのも、2mの外から0.5Nの力で回転させるのも同じトルクになる。言い換えると、トルクはどこに力を加えるかを定めない。

トルクはエネルギーと同じ単位を持っているが、トルクに含まれている距離 m は移動量ではない。ただ、トルクが作用する移動方向は円周方向で移動量の単位はラジアン(無次元)なので、あるトルクで1ラジアンの回転を行ったときに消費するエネルギーはトルクの値と同じにはなる。

transition metals:遷移金属
transition elements:遷移元素

遷移元素は全て金属であり、したがって遷移金属とも呼ばれる。
遷移金属は、最外殻(例えば4s軌道)だけでなく内殻(その場合3d軌道)に空の準位を持ち、原子番号の増加に伴って、最外殻ではなく内殻を電子が順に満たしてゆく。

遷移金属は、典型元素金属(遷移金属ではない金属)に比べ、一般的に次のような特徴を持つ。

・密度が大きい
・電気伝導度、熱伝導度が大きい
・融点、沸点が高い
・酸化数が複数ある

軽い(マグネシウムやアルミニウム)、または柔らかい(亜鉛や錫、鉛)というイメージの典型元素金属に比べ、人に比較的冷たい印象を与える金属らしい金属と言える。

鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、
金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、
チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、
タンタル(Ta)、タングステン(W)..

W

Work:仕事

仕事は、変化または移動した(しようとする)エネルギーの量である。(時間あたりの変化分ではない。)
エネルギーと区別する必要は無い。
日常でも感覚的にわかりやすい基本的な概念と言える。

力学では、
物体が、ある場所から力Fで高さrだけ持ち上げられたとき、その物体は
W = F x r (ML2T-2)(Nm)
だけの仕事をされた、あるいはエネルギーを与えられたことになる。

Y

Yield point:降伏点
Proof stress:耐力

弾性変形と塑性変形との境界は、特に炭素鋼では降伏点と呼ばれる。これは、ちょうどのその点の前後で、ひずみが大きくなるのに対して応力が小さくなるという逆転の現象(降伏現象)が起こるからである。
オーステナイト系SUS、それに一般的な非鉄金属(銅やアルミ)では降伏現象は起こらない。したがってこの場合は、永久ひずみが「ある小さな量以上」発生し始めた点として、「耐力」が弾性変形と塑性変形との境界に定義される。

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