第2節では、バインダーの種類から塗料を整理しました。
この節では、塗膜の状態または形成方法を、順に3つの段階ごとに分類してみます。
各段階の分類は、段階の間でそれぞれ1対1に対応するわけではありません。
例えば同じく「溶剤の蒸発」で硬化が開始する型であっても、
「融着/凝集」によって塗膜を作るものもあれば、
「化学反応」によって塗膜を作るものもあります。
さらに、ある段階では複数の形態や現象を選べるバインダー(1)や、
複数の現象をあわせ持った塗料(2)も多くあります。
段階1.塗膜を形成する前の段階
この段階では、
- 顔料やバインダーを均一に分散させておくこと
- 化学反応や凝集/融着が起こらない状態で保持しておくこと
- 形状が容易に変わること
- ワークに密着しやすいこと
が必要です。
これを実現する塗料の状態はいくつかあります。
粉体 |
溶液 |
分離された溶液(多液) |
エマルション |
家庭用としてよく目にするのは、溶液とエマルションです。
エマルションとは、溶解はせずに分散(乳化)した状態です。
溶液の溶媒は有機溶剤がほとんどで、エマルションの溶媒は水と有機溶剤の両方があります。
粉体は静電気によってワークに被着し、塗料として用いることができます。
塗料の形態ではありませんが、外部からのエネルギーを遮断しておかなければならない場合もあります。
2.硬化開始
ここでは、
- 分子同士の会合、またはエネルギーの注入
が必要です。
起こらなければならないのは以下のような現象です。
溶剤の蒸発 |
多液混合 |
外部からのエネルギー注入 |
これは、段階1の状態からの離脱ということでもあります。
溶剤の蒸発や多液混合は、分子の凝集/融着、または分子同士の会合を誘起するはずです。
3.硬化
硬化は2つのタイプに分けることができます。
融着/凝集 |
化学反応 |
融着/凝集によってのみできる塗膜は、主に分子間引力によって分子同士が結合しています。
これは熱可塑性塗膜であり、熱によって軟化したり溶剤に侵されたりします。
一方化学反応には、
- 熱や紫外線といったエネルギーを受け取るもの、
- 反応相手分子、または空気中の酸素や水分との会合によるもの
があります。
これらは熱や溶剤に比較的強い(広義の)熱硬化型塗膜です。
(*1)
アクリル塗料には
・エマルション(水希釈)型
・有機溶剤希釈型
があります。
そしてさらにそれぞれに、
・融着/凝集型(熱可塑性)
・化学反応型(熱硬化性)
があります。
(*2)
エマルション型塗料では、水の蒸発によって、凝集と共に、酸素や水分との会合による化学反応を併せて起こすものが多く開発されています。