「この部品の防水規格はJISの7等級です。」
「IECのIP67でお願いします。」
「IP65の認定を取ってください。」
このような会話が一度に出てくると実際少し心配になるかもしれませんが、
これらはおそらく全て、
日本工業規格(JIS)にある、JIS C 0920:2003
電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)
を表現しようとしています。
この規格には、「ねじ」(別章参照)に見られたような地域や
時代による名称の重複や定義の変遷はありません。
さらに、IECとJISが混在していてもそれぞれで用いられる
数字や内容は同じものです。
一般のWebサイトを参考にしたとしても
(もちろんキュレーションやバイラルでなければですが)、
あまり間違える要素の無いスッキリとしたわかりやすい規格であると言えます。
詳細についてはJISに規定されている内容を抜粋して
別のページに載せておきましたが、
ここでは数字の意味だけを簡単に紹介します。
たとえば67という数字は、
- 十の位:固形物に対する保護(いわゆる防塵)の等級が6であること
- 一の位:水の侵入に対する保護(いわゆる防水)の等級が7であること
を表しています(いずれも数字が大きいほどその性能は高い)。
先の会話の「防水規格」とは、この一の位の「水の侵入に対する保護の等級」のことを言いたかったのだと想像することができます。
さてしかし、我々を惑わせるのはいつも、
「JIS」
「防水規格」
「IEC」
「IP」
このような余分な単語やアルファベットです。
今回の話題「保護等級」を借りて、このことを少し整理しておきましょう。
比較的上位にあると言える約束/約定/条約のようなものから
下位にあるこの規格まで、まずは以下のように並べることができるでしょう。
- 世界貿易機構(WTO)
- そのTBT協定
- 国際的な標準化機関(ISO,IEC,ITUなど)
- 各国の標準化機関(JISなど)
日本は、
WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)
に加盟しています。
WTOは、
GATT(General Agreement on Tariffs and Trade:関税及び貿易に関する一般協定)
の後を受けて1995年に設立された機関で、
工業製品や農業製品について、世界という市場で自由な競争を
実現することを目的としています。
WTOの設立について定められた国際条約(WTO協定)には、
その目的を達するための各種協定が附属書に定められていますが、
その各種協定のうちのひとつに、
TBT協定(Agreement on Technical Barriers to Trade:貿易の技術的障害に関する協定)
があります。
この協定は、製品の技術的仕様に対し国際規格または
国際規格に準じた国内規格を適用させることによって、
貿易における技術的障害をとり除くことを目的としています。
そして、このTBT協定を根拠として、元となる国際規格を作るために、
ISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)
IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)
ITU(International Telecommunication Union:国際電気標準会議)
などが存在しているのです。
一方このように貿易を主な目的としなくても(そのずっと前から)、
各国では、産業の育成のための標準化はそれぞれ独自に行われていました。
東京と神戸でねじのサイズと呼び方が違えば戦車も飛行機も
うまく作れないというわけです。
どの国も、国際規格(標準)ができたからと言って、
それまでの長きにわたって工業を担い今では産業の一部になった
国の規格(標準)をおいそれと捨てるわけにはいきません。
JIS:日本
ANSI:アメリカ
DIN:ドイツ
したがって日本のJISは、現在では、ISOやIEC、
ITUなどの国際規格(標準)に整合するように調整されています。
JISにおいては、
「ここで定めた規格を正しく用いていれば国内でも海外でも
地域や時代に関する整合性の問題は出てこない」
ようにすることが大きな目標になっていると言えるでしょう。