「めっき」とは、溶液を用いるなど湿式の工法によって、材料の表面に別の金属薄膜を形成する方法です。
英語では(*1)、
nickel electroplating
electroless nickel plating
など、”plating” という単語で表されます(辞書にある “galvanizing” は実際にはあまり見かけません)。plating とはたとえば ion plating など真空蒸着にもよく使われる言葉で、翻って日本でもスパッタやCVDまですべてを含めて「めっき」と呼ぶような分類も無くはありません。しかしここでは、冒頭の定義をそのまま「めっき」として考えることにします。
材料の表面に薄膜を形成する方法には、めっき以外にもいくつかあります。下では、現象の物理/化学的な類似性を念頭に、湿式:めっき、湿式:化成処理、乾式(真空)、塗装の4つの工法に分けてみました。実際に「めっき」を選ぶ前に、そういえば他の工法ではどうなのか、一度比較してみるのも良いかもしれません。
【湿式:めっき】
(金属の薄膜形成)
・電気めっき
・無電解めっき(置換型、還元型)
・溶融めっき
【湿式:化成処理】
(金属以外の薄膜形成、表面の酸化/硫化、改質)
・化学酸化
・クロメート処理
・黒染
・陽極酸化
【乾式(真空)】
(様々な薄膜形成、表面の酸化/窒化、改質)
・酸化
・プラズマ酸化/窒化
・気相成長
・スパッタリング
【塗装】
・(技術情報「塗装」参照)
「めっき」について考えるときに忘れてはならないのが、その用途の驚くべき広さです。ざっとリストしただけでも、非常に多彩な分野で様々な目的をもって使われていることがわかります。
装飾
サテン調/パール調/ベロア調光沢調整
白/黒/銀色/ブロンズ色
防錆・防食
犠牲防食
装飾兼用
摺動・潤滑性調整
連結/伝導機構のカップリング
バルブ
耐摩耗
ロール/シリンダ/ピストン
工具
接着性調整
対高分子アンカー
金型離型面
工具
防汚
耐静電気
撥水/撥油
光触媒
塗装下処理
クロメート処理/リン酸塩処理
対シランカップリング剤
殺菌
衣類
フィルタ
手すり/取手/ハンドル
反射
熱反射板
カーブミラー
磁気特性関連
電磁波遮蔽
磁気記録媒体
非磁性アモルファス
電気特性関連
PCBパターン
電気回路接点
抵抗器
ボンディング表面
*1)
「めっき」は日本語です。漢字では、
鍍金
あるいは
滅金
と書かれます。
語源は古くから仏像などに施されている金めっきの工法にあります。「鍍金」は金アマルガム(金を水銀に溶かしたもの)を「塗る」という作業を、「滅金」は同じく金アマルガムから水銀を蒸発させて「減らす」という作業をそれぞれ示すと言われています。我々がこの章でとりあげる工業用のめっきとは少し違いますが、これも湿式で金属薄膜を形成する方法のひとつです。