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2025.8.6

技術情報

ねじ部【ねじ-03】

前節では、ねじ部の規格とは何なのか、なぜあれほど解りにくくなっているのか、経緯を交えてその概要を確認しました。

この節では、実際の現行JIS規格のうち、特に一般用メートルねじについて見てみることにします。 この規格は我々が日常最もよく使う規格であり、ねじ部の溝断面は1962年にまとめられた60度三角ねじです。 (角ねじ、台形ねじ、鋸歯ねじ、丸ねじなど特殊な形状の溝も世の中には存在します。)

既に述べたように、2001年まで「メートル並目ねじ」「メートル細目ねじ」というそれぞれの名称で分裂していた規格は、今ではこの「一般用メートルねじ」という規格に一本化されています。

したがって同じ呼びでも異なるピッチが複数定められています。

統合された「一般用メートルねじ」であっても、最も大きなピッチを「並目」、それより小さなピッチ(M8以上では複数あります)を「細目」と呼ぶことがありますが、前節の歴史にあるとおり、こちらは「便宜的に用いられる表現」であって規格の名称ではありません。 (JIS ではこの表現を使わずに済むようになっています)

【一般用メートルねじ (M1からM10)】 ([JIS B 0205-2,4:2001]より、抜粋/整理) (黒はさらに[JIS B 0205-3:2001]にて推奨される選択)

呼び おねじ外径  めねじ谷径 おねじ有効径  めねじ有効径 おねじ谷径  めねじ内径  ピッチ 備考
M1 1 0.838 0.729 0.25 (*NM)
M1 1 0.870 0.783 0.2  
           
M1.1 1.1 0.938 0.829 0.25 (*NM)
M1.1 1.1 0.970 0.883 0.2  
           
M1.2 1.2 1.038 0.929 0.25 (*NM)
M1.2 1.2 1.070 0.983 0.2  
           
M1.4 1.4 1.205 1.075 0.3 (*NM)
M1.4 1.4 1.270 1.183 0.2  
           
M1.6 1.6 1.373 1.221 0.35 (*NM)
M1.6 1.6 1.470 1.383 0.2  
           
M1.8 1.8 1.573 1.421 0.35 (*NM)
M1.8 1.8 1.670 1.583 0.2  
           
M2 2 1.740 1.567 0.4 (*NM)
M2 2 1.838 1.729 0.25  
           
M2.2 2.2 1.908 1.713 0.45 (*NM)
M2.2 2.2 2.038 1.929 0.25  
           
M2.5 2.5 2.208 2.013 0.45 (*NM)
M2.5 2.5 2.273 2.121 0.35  
           
(M3)       (0.6) 旧JIS参考
M3 3 2.675 2.459 0.5 (*NM)
M3 3 2.773 2.621 0.35  
           
M3.5 3.5 3.110 2.850 0.6 (*NM)
M3.5 3.5 3.273 3.121 0.35  
           
(M4)       (0.75) 旧JIS参考
M4 4 3.545 3.242 0.7 (*NM)
M4 4 3.675 3.459 0.5  
           
M4.5 4.5 4.480 3.688 0.75 (*NM)
M4.5 4.5 4.175 3.959 0.5  
           
(M5)       (0.9) 旧JIS参考
M5 5 4.480 4.134 0.8 (*NM)
M5 5 4.675 4.459 0.5  
           
M5.5 5.5 5.175 4.959 0.5  
           
M6 6 5.350 4.917 1 (*NM)
M6 6 5.513 5.188 0.75  
           
M7 7 6.350 5.917 1 (*NM)
M7 7 6.513 6.188 0.75  
           
M8 8 7.188 6.647 1.25 (*NM)
M8 8 7.350 6.917 1  
M8 8 7.513 7.188 0.75  
           
M9 9 8.188 7.647 1.25 (*NM)
M9 9 8.350 7.917 1  
M9 9 8.513 8.188 0.75  
           
M10 10 9.026 8.376 1.5 (*NM)
M10 10 9.188 8.647 1.25  
M10 10 9.350 8.917 1  
M10 10 9.513 9.188 0.75  

(*NM):2001年に統合されるまで「並目」と呼ばれ区別されていた最も大きなピッチです。 後述しますが、同じ呼びの中でこのピッチだけはピッチの表示を省略することができます。 表の数値は基準寸法 (mm) です。実際のねじは 6H, 5g などという表現の「公差域」をもって造られています。

さて、前節の話題にあった表示についてです。 [JIS B 0209-1:2001]には、以下の規定があります。

5. 呼び方  5.1 一般事項 ねじの呼び方は、ねじの種類及びサイズ並びにねじの公差域クラスから成り、必要な場合には更に、個別の項目を続ける。 5.2 一条ねじの呼び方 JIS B 0205-1、JIS B 0205-2、JIS B 0205-3、JIS B 0205-4、JIS B 0209-2 及び JIS B 0209-3 による一般用メートルねじ規格の要求を満たすねじは、文字“M”に続けて,記号“×”で区切った呼び径及びピッチの値(ミリメートル)によって示す。 [JIS B 0205-2]に載っている並目ねじ(これは元の表現として:上の表では(*NM)のピッチ)に関して、ピッチは省略してもよい。

これによれば、 M8 × 1 の後半にある表示、”× 1”は、 「ピッチが 1mm である」 ということを正しく表していると言えます。 もし表示が M8 であれば、それはピッチの省略です。ピッチが 1.25mm であることを表しています。