塗装は、我々のまわりのるあらゆるものに施され、
構造物や製品の外観を支配しています。
たとえば自動車や建物などは、
塗装による外観が商品価値の重要な部分を担う
目立った例と言えるでしょう。
また、塗装にはそれだけでなく、
「機能を付加する」というこれも重要な側面があります。
思いつくだけリストしてみても、実際には意外なくらい
多くの目的で用いられていることがわかります。
- 耐錆/耐腐食
- 耐熱
- 耐油
- 耐火
- 防汚
- 防音
- 可視光反射/吸収
- 熱線反射/吸収
- 電磁波反射/吸収
- 電気的絶縁
- 熱的絶縁
目的が外観なのか機能なのかは別にして、
塗装は、はるか古代の洞窟やピラミッドの壁から、
日本を含め東洋の漆、近代では軍艦の船底塗装にその歴史を刻んできました。
現代の塗装は方法も材料もその先達から見ると驚くほど多様化していますが、
それを頭の中で整理しておくのは悪いことではありません。
さて、塗装とは、
「塗料」 を用いて 「塗装を施す」
ことです。
(塗装を施すという行為には、「塗る」とは
およそ言えないものも含めて様々な形成方法があります。)
ホームセンターやDIYショップで塗料のコーナーに行ってみると、
「家庭でも使いやすい△△塗料」
「屋外なら紫外線に強い〇〇を」
など、商品の説明や宣伝をお腹いっぱいに読むことになります。
であればとネットで検索しようものなら、
それら商品の宣伝に加え、それぞれ性能の一面だけを捉えた無数の
情報に我々弱者が右往左往することは請け合いです。
それらが言う塗料の種類とは、例えば、
エポキシ系塗料、ウレタン塗料、エナメル、メラミン、ラッカー、水性塗料、ペンキ、...
などです。
はたしてこれらはどういった特徴をどう区別して
表そうとしているのでしょうか。
呼び名がこれほどまでに一般消費者を混乱させる商品は、
塗料以外には無いかもしれません。
これを整理する一番の近道は、分類するうえでの観点を、
- 塗料の形態
- バインダー(基体)
- 形成方法
の3つに分けることです。(*1)
これら各観点で分類された数の掛け算だけ塗料の種類は
存在するのかもしれない、とまず思ってみることは大切です。
それは、塗料の名称が1、2、3の(あるいはその他の)
どの観点で分けられたものかを明確にするという姿勢です。
しかし実際には、例えば1が水溶性の塗料では2のバインダーも
3の形成方法もある程度限られ、全体の種類の数がそれほど
多くなるわけではありません。
3つの観点それぞれについて、おおまかに分類しておきます
1.塗料の形態
水溶性 |
弱溶剤型(俗称としての「エナメル(*2)」) |
強溶剤型(俗称としての「ラッカー(*3)」) |
多液型 |
エマルジョン |
2.バインダー
天然樹脂 |
合成樹脂 |
無機材料 |
3.形成方法
乾燥 |
加熱 |
紫外線硬化 |
混合 |
(*1)
この他にも、
・顔料種類(着色、体質、無機/有機、金属..)
・乾燥方法(加熱乾燥、紫外線硬化..)
・塗膜性状(つや有、メタリック、透明..)
・塗装対象(建築用、航空機用、家庭用..)
・機能別(防虫、磁性、絶縁..)
など多くの分類観点があります。
(*2)
「エナメル」とは、本来、比較的光沢を伴った着色の総称です。
(*3)
「ラッカー」とは、本来、セラックやウルシールラッカーなどの天然樹脂を指します。