前節では、音の大きさ、高低、といった音の基本的な性質をまとめました。
この節では、音の伝わり方と防音について考えてみます。
音は、その進行方向に向かって媒質の粗密が振動して伝搬する縦波ですが、
光や他の横波と同様、2つの異なる媒質の間で反射や屈折が起こります。
反射
媒質の分子は音圧によって動きます。
その速度と音圧との比を、電気的なインピーダンスに倣って
音響インピーダンスと呼びます。
2つの異なる媒質の音響インピーダンスをそれぞれ Z1、Z2 とすると、
これらの媒質の間の音圧の反射率 r は以下のように表されます。
r = (Z2-Z1) / (Z2+Z1)
電気回路や電磁波と同様、Z1=Z2の場合は反射は起こりません。
空気の音響インピーダンスは約400です。
個体の音響インピーダンスは、その材質だけでなく厚みや固定方法に左右されます。
例えば厚くて重い金属の音響インピーダンスは 10 の 7 乗を超え、
したがって音を殆ど反射しますが、薄くて軽く充分に固定されていない
金属板は、空気からの音圧を受けて同じように振動し音を
反対側に伝えてしまいます。
これは、この状態の金属板の音響インピーダンスがそれほど大きくないということを示しています。
屈折
光と同じように、2つの媒質で音の速度が異なる場合、
それらの媒質をまたいで伝搬する音の進行方向は変わります。
例えば、空気と水、暖かい空気と冷たい空気、このような2つの媒質間で屈折は起こります。
伝搬
音源から充分離れた位置では、音は球面波となって伝搬します。
したがって、音のパワー(仕事率)またはエネルギー(仕事)は
音源からの距離の2乗に反比例します。
また、空気中では周波数が高いほど音の吸収係数が高くなりますが、
そのために例えば銃の発射音や爆発音は、近くでは「パン」、
遠くでは「ドーン」と聞こえます。
騒音で特に高い音が気になる場合は、単純に音源と作業者とを
離してみるというのも意外に良い方法です。
回折
音は、小さな隙間を通り抜けたり、壁の端をすり抜けたりするとき、
回折を起こすことによって陰に回り込みながら伝搬します。
隙間のある筐体や単なる衝立は、見た目は音源を隠していても
それほどの効果を防音に関しては発揮しません。
吸収
音を反射せずに取り込んだ材料において、粘性をもった分子が振動したり、
材料の繊維の間で摩擦が起こったりすると、
音のエネルギーは吸収されて熱に変わります。
吸収は最も一般的な防音方法です。
音の吸収に用いられる主な材料としては、
- 多孔質材料 ロックウール、グラスウール
- 振動板材料 木板
などがあります。
また、共鳴させ閉じ込めてから吸収すると言う方法もよく使われています。
- 共鳴型材料 パンチングボード
防音の構成(入れないのか/出さないのか..など)によって、
反射と吸収とは使い分けなければなりません。
厚いコンクリートが音を通さないのは反射によるものであり、
グラスウールが音を通さないのは吸収によるものです。
最後に、音源から順に大きく3つに分けて、防音の基本について少し見直してみます。
策が尽きてしまったときなど、こうして一歩下がって考えてみるのも
良いかもしれません。
- 発生源における対策:発生する音の大きさを低減する
- 伝搬における対策:音が伝わらないようにする
- 感知者における対策:音を感知しないようにする
発生源における対策
目的 | 例 |
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振動除去 | ゴムブッシュ、ばね、フローティング |
摺動部改善 | 給油、高精度部品 |
時間短縮 | オペレーションの見直し |
伝搬における対策
目的 | 例 |
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遮音 | 隔壁、塀、筐体 |
消音 | 吸音体、アクティブ・コントロール |
方向制御 | ホーン、反射板 |
減衰 | 再配置 |
感知者における対策
目的 | 例 |
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遮音 | 耳栓、イヤーマフ |
隔離 | 遠隔操縦 |