- 引張による破壊(円筒部/遊びねじ部の破断)
- 引張による破壊(ねじ山のせん断)
- せん断による破壊(軸と垂直方向のせん断)
- 捻りによる破壊(回転方向のせん断)
2.引張による破壊(ねじ山のせん断)
ねじ山のひとつがせん断を受ける(せん断の力の向きの)長さ Z は、ねじ山の断面図からわかります。
Z = (P/2)+(d2-d1)*tan30°
完全に噛み合っているねじ山の数をn個とすると、せん断面の面積合計Sは
S = Z*πd1*n
となり、これにせん断に耐える応力Tをかけ合わせると、せん断に耐える力 S*T となります。
S*T = {(P/2)+(d2-d1)*tan30°}*πd1*n*T
実際にどのくらいになるのか、比較のため前節(引張による破壊(円筒部/遊びねじ部の破断))で選択した結果を引いてきて計算してみましょう。
- 強度区分は10.9 → 最小降伏応力=940(N/mm^2))
- 繰り返し片振り荷重 → 安全率=5
- 耐せん断/耐引張許容応力比(*1) → 0.6
これでTは以下のとおりとなります。
T = 113(N/mm^2)
また、M5のおねじが呼びと同じ長さだけめねじと完全に噛み合っているとして、
n = 6.25
を使いましょう。
実際、「最低でも呼びと同じ長さは嵌合させる」というガイドラインは
多くの方がお持ちだと思います。
また、ねじの断面図より、M5ではねじ山の各サイズは以下のとおりです。
H=(tan60)*P/2 = 0.693
d1=d-10H/8 = 4.134
d2=d-6H/8 = 4.480
これでせん断面の面積合計 S は、
S = 48.7(mm^2)
となります。
最後に、これらの結果、ねじ山がせん断に耐える力 S*T を、
S*T = 5490(N)
と見積もることができます。
前節では、引張力 2000(N) による破壊(円筒部/遊びねじ部の破断)に耐えるため、
強度区分 10.9 の M5 を選定し、このおねじは 2670(N) の引張力に耐えることがわかりました。
それと比較すると、同じく引張力に対して、ねじ山のせん断に関しては
約2倍の負荷に耐えることがわかります。
ねじの呼び以上に嵌合長さをとっておけば、という条件付きです。
このように正しく使えば無視できるはずのねじ山のせん断ですが、
実際には起きてしまうことがあります。
多くは、嵌合長さが充分でない、下穴が適正でない、
材質が脆くなっている、..などがその原因と考えられます。
*1)
せん断応力/引張応力 = 1/√3
(ミーゼスの条件より)